2016年04月26日

『だからデザイナーは炎上する』を読んで、デザインを考える

東京オリンピックのエンブレムが、4案の最終候補案のA案「組市松紋」に正式に決定しましたね。

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(THE PAGEより)


新五輪エンブレムに「組市松紋」のA案 宮田委員長「エンブレム愛して」(THE PAGE)

【中継録画】新しい東京五輪エンブレムにA案 宮田委員長と王貞治氏が発表(THE PAGE)

また、今回は前回の反映を踏まえたのか、4案に寄せられた意見についても公表されています。

東京2020大会エンブレム最終候補作品に関する ご意見集約レポート(PDF・東京2020組織委員会)

色々な意見が既に噴出していますが、もう決まった事なので、このエンブレムをオリンピックに向けてしっかりと効果的に使って行き、親しむことが大切なのではないかと思います。

今回、採用されたA案をデザインした野老朝雄(ところ・あさお)さんについては、Fashionsnap.comなどがまとめています。

新・東京五輪エンブレムデザイナー野老朝雄とは?制作の裏側を探る(Fashionsnap.com)

建物のファサードなどを手がけられて、紋と紋様の専門家みたいな感じでしょうか。
これから仕事増えまくるんでしょうなぁ、いいなぁ。

さて、(今後何も無ければ)東京オリンピックのエンブレム問題については一件落着といったところですが、改めて、今回ほどデザイン・ロゴ・デザイナーについて注目を集める事件は無かったと思うのです。
自戒を込めて、今回の一件はしっかりと覚えておいて、果たしてデザイナーやデザインが社会の発展にどのようにして寄与できるのか、しっかりと考えていく必要はあると思います。

『だからデザイナーは炎上する』を読みました


そんな意味を込めて、『だからデザイナーは炎上する』 (藤本貴之 著/中公新書ラクレ)を読みました。

だからデザイナーは炎上する (中公新書ラクレ)
藤本 貴之
中央公論新社
売り上げランキング: 45,051


視点がしっかりとしていて、デザイナーは一回読んでおいた方が良い本だと思います。

今回のエンブレム問題は、デザイナー界隈の体質の古さにあるといい、その理由を述べていますが、たしかに腑に落ちる説明がなされています。
またこの問題は、「パクリ」が火種の主な原因だったのは記憶に新しいと思います。
しかしながら、デザインや創作活動は、何かの模倣や元ネタが必ずあると言っても過言ではありません。
その上で、オリジナリティをどのようにして出すかが、プロとしての仕事なのですが、この本では、「パクリ」と一言でまとめられてしまうようなものを、「複製」「盗作」「オマージュ」などに分類し、「許されるパクリ」「許されないパクリ」としてまとめています。

また、前回のエンブレムは大変わかりにくかったと筆者は言います。
確かに、インクルーシブだのダイバーシティだの、分かるための説明が分かりにくい言葉であふれていたように感じます。
インターネット時代は、スピードが命なため「直感的に理解させるデザイン」が出来るかどうかが、今後デザイナーとして生き残れるかどうか、とも言っています。

広告やデザインは基本見られていない


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仕事がら、広告やCMは見るようにしていますが、渋谷のように広告だらけのところに行くと、基本的には広告なんて見ませんよね?
見たとしても一瞬、数秒の世界だと思います。

その中で、しっかりと記憶に残ったり、「かっこいい」「かっこわるい」といった判断を下されるわけですから、やはり直感的にわかりやすいデザインというのは、今後求められるのでしょう。

しかし、「そこに込めた意味」の説明は必要なのではないか


確かに、説明不要で、直感的に分かりやすいデザインは今後必要になってくると思います。
そもそも、デザインは「複雑な物事を、分かりやすくする」という使命があるので、「直感的に分かりやすいデザイン」というのは本末転倒な気さえします。

しかしながら、会社・組織・団体が出すデザイン、ロゴについては、ある程度の説明は必要なのではないかと思います。
もちろん、直感的にカッコいい、分かりやすいデザインを心がけた上で、「ここはこういう意味があり、ここはこういう意味でこの数にしてあります」といったような、デザインの説明は、会社の内部にとっても外部にとっても、その会社を知る事に繋がるのではないでしょうか。
今後、その会社のお世話になりたい人、お世話になっている人が、その会社がどういうことを考えて、世の中に発信しているのかという事は、大切な情報だと思います。

デザイン自体にくどくど説明するのは避けた上で、そのデザインに含んでいる意思・姿勢は、しっかりと言葉として発信する事が大切なのではないかなと、一デザイナーとして思うのでありました。

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2015年07月16日

『エッセンシャル思考』は全員に読んでほしい

今年もあと残すところ5ヶ月ほどとなりました。
正直なところ、今年の上半期はパッとしない日々が続いたのですが、本については、じっくりとたくさん、読むことができました。
その中で、特に印象深かった本をご紹介します。

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『エッセンシャル思考』です。
この本は、本当に色々な人に読んでいただきたい本だと思います。


「人生において大切なことは1%、残り99%は無駄」


書籍では、全編にわたって「人生において大切なことは1%、残り99%は無駄」という考え方に基づいて、語られています。
生きていると色々な人がいて、色々なことが身にかかってくる。
しかしそのほとんどは、自分にとって大切な事ではないのです。
その大切なことは、気負わず、他の人にお任せしてしまうのが一番だということです。

これだけ書くと、「じゃあ自分勝手に生きろってことかよ」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
私も、そう考えていました。

ただよく考えてみると、確定できない曖昧な返事をしてしまうのは、結果として相手に迷惑をかけてしまう可能性が高いですよね。
「色々と犠牲にして無理にすれば出来るかもしれない」のを、「出来る」と言い換えて請け負ってしまう。
犠牲にされた方はもちろんのこと、犠牲にする自身も心が痛みますし、そのように無理にして請け負った案件は、品質も悪く、挙げ句の果てには納期に間に合わなかったり、完成しないままになってしまう可能性も高いです。
これでは、誰が幸せになるのでしょう…。

潔く、具体的な説明


この書籍の良いところは、説教臭くなく、きちんと具体的に「エッセンシャル思考の人」「エッセンシャル思考ではない人」と区別されていることです。
他のビジネス書籍や自己啓発系書籍では、あまり観られないほど、きっぱりと言い切っています。
そして、その区分け方は、とても納得でき気持ちがいい。
一部だけご紹介しましょう。

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このような感じで、ところどころに分かりやすく、エッセンシャル思考の人とそうでない思考の人の行動パターンが明示されています。
この潔さと分かりやすさが、他の思考系書籍とは異なる部分だと思っています。

「断る」ことは怖くない


『エッセンシャル思考』では、99パーセントの無駄にNOを言うことが全編にわたって書かれています。
「断る」ことは怖いことです。
特に、私のようなフリーランスであったり、不安定になってしまう環境に身を置いている人は、「断ること=全てを失うこと」のように思えてしまいます。
「この仕事を断ったら、この先、このクライアントからは依頼がないかもしれない…」
「断ることで、今月の収入が限られてしまう…この先仕事が来るかどうかも分からないのに…」
こういった不安が、常に頭の中にある状態です。

しかしながら、独立して4年以上経ったいまは、断ることにそんなに恐れを抱かなくなってきました。
もちろん、「断る理由がない」時は、断る必要は全くないですよね。
ただ、その「断る理由がない」というハードルは高くなりました。
今は、以下の5つを全て満たすことができると分かった場合、ご一緒することにしています。

・クライアントと二人三脚で取り組めるだけの時間的余裕
・ひとりや家族と過ごす時間を確保できる
・クライアントが求めていること、自分が出来ることに差がない
・クライアントがこの仕事を通じて、新しいステージに進むことが出来る、またその準備が出来ている(ブランディングデザインを導入した後のビジネスプランがしっかりとある)
・自分が楽しめる環境で、将来誇れる仕事ができる環境

別に、これは仕事をセーブしようとしているわけではないのです。
むしろ、この状態をキープしてからは、新しいご依頼を継続的に頂けるようになりました。
それは、取り組む仕事に対して、これまで以上に「自分が出来ることで、いかに相手に(クライアントに)喜んでもらえるか」ということに注力できたからだと、自分では考えています。
これは当たり前のことですが、忘れがちになってしまうことではないでしょうか?

「忙しいアピール」は権威の誇示にさえならない


なんでもかんでも、頼まれごとを引き受けてしまうと、
「3時までにこの仕事を終わらせて、そしてあの頼まれた資料を半分までやったら、5時からの会議に出ないと…でもその前に家の用事があったんだ、でもこれは今日やらなくてもいいな、でも今日中にお願いって頼まれたっけ…」
という状態になってしまいますよね。

そのような状態だと、いつまでたっても大事な事が分からない、本質もわからない、目先のことに囚われ過ぎて、自分や「本当に大切にしなければならないこと」を後回しにしてしまいます。

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よく「忙しすぎて寝てない」「忙しすぎて遅れちゃってすみません」などと、忙しさを理由にして色々な事案について対応する人がいますが、そのような人は「何に対して、何を投資すべきなのか」が分かっていないのです。
もったいない時間の使い方をしています。
また、忙しいことをアピールして、権威を自分自身で保証するような人がいますが、これも間違っています。
そもそも他の人は「忙しさアピール=権威保証」ということを見破っている可能性が高いです。

苦労にも種類がある


このようなことを言うと、「若いうちはとにかく苦労した方が良いんだ」という反論をよく頂きます。
私も、この通りだと思います。

しかしながら、苦労にも種類があります。
時間的な余裕を持てない苦労、体力的・精神的に厳しい苦労、自分にとって何もプラスにはならない苦労については、私は避けるべきだと考えています。
特に精神的に厳しい苦労は、何もいい結果を生まないと考えています。
それよりも、知識を整理したり追加したり、スキルを整理したり追加したり、人の話を親身になって聞くようにしたり、そのように自分にも人にもプラスになるような事に時間を費やす事が、若いうちにすべき「苦労」なのではないかなと考えていますし、この『エッセンシャル思考』を読んで、その考えに自信を持てるようになりました。

『エッセンシャル思考』は、時間管理や小手先のテクニックではなく、生き方そのものをシンプルに、より本質に近づける、そのような本だと思います。

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posted by あんず at 16:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年06月15日

リーアンダー・ケイニー『ジョナサン・アイブ』を読んで

今では、電車の中でガラケーを使っていると、恥ずかしさを覚えるようになったといいます。
私は恥ずかしいとは思いませんが、やはりiPhone 3Gから使い続けていると、iPhoneはもう手放せない存在になっています。
Appleはデザインで数々のブレークスルーを起こしてきました。
その立役者が、Jonny Ive(ジョナサン・アイブ)というデザイナーです。アイブについて書かれた本、『ジョナサン・アイブ 偉大な製品を生み出すアップルの天才デザイナー』を読みました。

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Jonny Iveとは


Jony Iveは1967年、イギリスの生まれです。
最近ではApple WatchやiPhoneなどの、Appleの販促ビデオに必ず出演しているので、観たことがあるという人も多いと思います。独特の発音(特にアルミニウムをアルムィナム)が特徴です。



本によると、教師である父親からデザイン教育を受け、幼い頃からデザインの才能を発揮していたといいます。
ノーザンブリア大学でインダストリアルデザインを専攻し、その後デザイン・エージェンシーのtangerine(http://www.tangerine.net)でキャリアを積みます。

その後、Appleに移り、20周年Macのデザインにおいて、その優秀な才能をいよいよ発揮することになります。
本では、この辺りの経緯が細かく描かれており、人々の生活を変えたデバイスのデザイナーが、どのようにしてキャリアを積んできたのか、事細かに分かります。

今年の5月からは、Appleの新しい役職である「Chief Design Officer」に就任。
事務的な数字や戦略よりも、創作に集中したいという姿勢が本でも書かれていますが、この役職に就任した事により、これまで以上に幅広くデザインを統括するのではないかと言われています。

大切なのは「シンプルを複雑な仕組みで実現する」


Jony Iveは、シンプル哲学の奴隷とこの本では表現されています。
デザイナーやデザインを意識させないデザインを行うために、設計から生産工程まで、複雑な仕組みで実現させるといいます。
シンプルに見える製品でも、その裏では複雑な仕組みで動いていたり、アップル社内で色々と揉まれた上で、実現していることも、この本では描かれています。

シンプルは手抜きではない


シンプルにすることは手抜きとは違います。
本当に必要な物をみつけ、その必要な物を最大限発揮できるように磨き上げることが、シンプルにすること、といえます。
当たり前のことですが、これをなかなか理解して頂けないことも多いのです。
特に、ロゴやCIの設計においては、シンプルなものを提案すると「手抜きではないか」と疑われることもあります。
これは残念な事ですが、私の実力不足と同時に、まだまだシンプルにする事の大切さ・複雑さをご理解頂けていないことも事実です。
その際は、個人的にはそのプロセスをしっかりとお見せすることが大切だと思っています。

100の事にNOを言う大切さ


この本では、シンプルとは何かということを深く、考えさせられます。
私は、「シンプルにする事は、一つの事に集中させる事であり、それ以外にNoを言う事」だと理解しました。
それは、自分の仕事においても、また人生においても言えることだと思います。
他の人に何を言われようと、大切だと思う事を決めたら、それを大切にして突き詰めること。
その他の事には、勇気をもってNoということ。
…それが出来るようになるまで、まだまだ頑張らないと。

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posted by あんず at 18:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする